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So sánh ảnh hưởng của đạo thiên chúa tới nhật bản và việt nam nghiên cứu trọng tâm ảnh hưởng tới chữ viết

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ĐẠI HỌC QUỐC GIA HÀ NỘI
TRƯỜNG ĐẠI HỌC NGOẠI NGỮ
KHOA NGƠN NGỮ VÀ VĂN HĨA PHƯƠNG ĐƠNG

KHỐ LUẬN TỐT NGHIỆP

SO SÁNH ẢNH HƯỞNG CỦA ĐẠO THIÊN
CHÚA TỚI NHẬT BẢN VÀ VIỆT NAM
NGHIÊN CỨU TRỌNG TÂM ẢNH HƯỞNG TỚI CHỮ
VIẾT

GIÁO VIÊN HƯỚNG DẪN: TRỊNH THỊ NGỌC LAN
SINH VIÊN : NGUYỄN THỊ MINH NGUYỆT
KHÓA : K42 – 2008

HÀ NỘI – NĂM 2012

1


ハノイ国家大学
外国語大学
東洋言語文化学部

卒業論文

キリスト教の影響日越比較研究
―文字への影響に中心―

指導教員:TRINH THI NGOC LAN
学生 : NGUYEN THI MINH NGUYET


クラス :K42 08J5

ハノイ 2012 年 5 月 1 日

2


誓約書
本稿は自分の知識に基づき書かれ、参考資料、推論基礎以外、コミュニ
ケーションメディアに投稿、揚載しておらず、未公表の論文であることに
誓約する。それに、投稿に際して、筆頭研究者が了解していることを誓約
する。

謝辞
2011 年の 2 月に、父親が亡くなって以来、多数くの困ったことがあ
り、論文を止めろうと思ったこともあるが、いつも助け、励ましてくださ
った母親に厚く感謝の意を申し上げたいと思います。
さらに、本論文を完成するに際し、日頃からご丁寧で、ご親切な指導、
ご支援をいただいた Trinh Thi Ngoc Lan 先生に厚くお礼を申し上げたいと思
います。長い間、本当にいろいろ大変お世話になりました。
そして、私が悲しい時、さびしい時にいつもお世話になり、心強く支
えてくださった Nguyen Ngoc Tuan さんを心より深い感謝いたします。

2012 年 5 月 1 日

3


はじめに
外国語学習者にとって、言語のみならず、その国の国民生活精神、習

慣、ある社会問題に対する考え方も理解するのが必要だと思われる。現在
ハノイ国家大学外国語大学の四年生である筆者は、大学で日本語の文法だ
けではなく、文化文明·文学歴史大学·地位学·などの科目を習っている。その
科目の中で、特に文化文明は面白いと考えられる。その科目を通じて日本
人の生活習慣·死生観·労働意識·教育制度を教えられた。勉強している過程に
おいて宗教に興味を持ち、日本の宗教について調べたものである。
日本における三大教は神道、仏教、キリスト教だと言われている。
元々日本固有の宗教である神道及び六世紀に日本に伝えられ、長い間の時
間で発展してきた仏教に比べ、ヨーロッパの文化から深く影響を受け、新
しく伝教されたキリスト教の信徒は少ないわけである。
文部科学省の宗教統計調査により、日本国内で神道の信徒数は約 1 億
700 万人、仏教の場合は約 9800 万人であり、一方、キリスト教の信徒数は
公式数としては約 300 万人程度であり、人口比では 1% しか占めないと書か
れている。
しかしながら、日本に伝教された、キリスト教はさまざまな特色な影
響を与えたと言えるであろう。建築や文学や音楽などの文化及び日本人の
生活だけではなく、日本の文字にも影響を与えた。
本論の目的は日本のローマ字及びベトナムの国語字を中心にし、日本
およびベトナムに伝教した際に、キリスト教は日越の文字にどんな影響を
与えているか詳しく述べたい。
国際比較について、日越両国の社会・経済・文化等がかなり違うこと
は十分に了解している。しかしながら、16 世紀にベトナムに伝教されたキ

4


リスト教も日本と同様にベトナムの文字に大きく影響を与えた。その点で
は両国は歴史的・文化的背景が共通しており、その古い歴史から前提にし
て比較検討を行っていきたい。
本論文は 5 章構成で成り立っている。

第一章は研究テーマの目的・対象・方法及びキリスト教概念等の全体
的フレームワークについて、とくにキリスト教の教理・教義について検討
している。
第二章及び第三章は世界及び日本におけるキリスト教の発展の歴史を
述べ、影響を分析したいと思われる。
また、第四章ではベトナムにおけるキリスト教の発展述べ、ベトナム
の各分野への影響を分析している。
第五章では教育への影響、特に中心にし、キリスト教による日本のロ
ーマ字及びベトナムの国語字の生み出されたことの目的・背景、さらに、
両国の各分野への影響を比較検討している。
最後に以上の 5 章の比較研究の結果をまとめ、今後の課題について述
べている。

5


はじめに............................................................................................................................................ 8
第一章 研究テーマへのフレームワーク.................................................................................... 9
第一節

研究テーマの目的.対象.方法................................................................................ 9

1. 研究の目的 ......................................................................................................................... 9
2.研究の対象........................................................................................................................ 10
3.研究の方法........................................................................................................................ 10
第二節

キリスト教の概念・教義・教理.............................................................................. 10

1. キリスト教の定義 ........................................................................................................... 10

2. キリスト教諸教派 ........................................................................................................... 11
3.キリスト教の教義・教理 ................................................................................................ 12
第二章 キリスト教の発展歴史及び各分野への影響.............................................................. 16
第一節 キリスト教の発展歴史................................................................................................. 16
1. キリスト教成立 ............................................................................................................... 16
2. キリスト教の発展歴史 ................................................................................................... 17
3.現代におけるキリスト教の動向 .................................................................................... 18
第二節

世界におけるキリスト教の影響............................................................................. 19

1. 建築への影響 .................................................................................................................. 19
2.美術への影響 .................................................................................................................... 20
3. 音楽への影響 ................................................................................................................... 22
4.文学への影響 .................................................................................................................... 25
5. 哲学への影響 ................................................................................................................... 26
6. 科学への影響 ................................................................................................................... 28
7.キリスト教に基づくとされている習俗 ........................................................................ 31
第三章 日本におけるキリスト教.............................................................................................. 36
第一節

日本におけるキリスト教の発展歴史...................................................................... 36

6


1.第一期

キリスト教の伝来から鎖国·禁教令のと迫害期まで(1549 年から 1639 年


まで)...................................................................................................................................... 36
2.第二期 プロテスタント宣教も始まる(1867 年から 1945 年まで) ..................... 39
3. 第三期 初めて信教の自由が得られた時代(1945 年から 2000 年まで) .................. 40
第二節

日本の各分野へのキリスト教の影響...................................................................... 43

1.日本建築への影響 ............................................................................................................ 43
2.日本文学への影響 ............................................................................................................ 45
3.日本の教育への影響 ........................................................................................................ 45
4.日本人の生活文化への影響 ............................................................................................ 49
第四章 ベトナムにおけるキリスト教........................................................................................ 51
第一節 ベトナムにおけるキリスト教の発展歴史................................................................ 51
第二節

ベトナムにおけるキリスト教の影響...................................................................... 54

1.キリスト教はベトナム及び世界との文化交流に貢献した事 .................................... 54
2. ベトナムの国語字を作り出した事 ............................................................................... 55
3.キリスト教がベトナムの文化を豊かにした事 ............................................................ 56
第五章 日越のキリスト教により作り出された文字の影響分析.......................................... 58
第一節 日本のローマ字の影響................................................................................................ 58
第二節

ベトナムの国語字の影響.......................................................................................... 60

1.政治の分野への貢献 ........................................................................................................ 61
2.教育への貢献 .................................................................................................................... 62
3.文学発展への貢献 ............................................................................................................ 63
第三節


2 つのキリスト教により生み出された文字の日越比較 ....................................... 64

1. 共通点 .............................................................................................................................. 64
2.類似点................................................................................................................................ 66
終わりに.......................................................................................................................................... 68
第一節 結論................................................................................................................................ 68

7


第二節 今後の課題.................................................................................................................... 69
謝辞.................................................................................................................................................. 70
参考文献.......................................................................................................................................... 71

8


第一章

第一節

研究テーマへのフレームワーク

研究テーマの目的.対象.方法

1 . 研究の目的
16 世紀に日本に伝えられたキリスト教は神道及び仏教に比べると信
徒数は少ない。しかしながら、キリスト教は少なくとも日本に積極的に変
化させてきた。例としては、日本の建築や文学や日本人の生活習慣などに

影響を与えた。なぜかと言うと、宗教が来たことと共に外来文化も入り、
日本の文化等に影響を与えたからである。
伝教のため、宣教師が日本語を表記するのに、ひらがな及びカタカナ
以外の他の文字を作り出した。それは現在よく使われているローマ字であ
る。それにより、外来宗教だけではなく、欧米からの文化がスムーズに日
本に入ったわけである。外来文化の影響を受け、教育のみならず、美術、
建築、さまざまな社会問題についての国民観念も積極的に変化してきた。
キリスト教が日本を変わらせたと言えるだろう。
さらに、日本と同じく、ベトナムの場合も、16 世紀にキリスト教を
伝えるためやって来た外国からの伝教師もベトナム人の発音に基づき、表
記した文字を作り出した。現在、その文字はベトナムの国語字だと言いわ
れている。両国は歴史・地位・政治などが違いが、ある面では、キリスト
教の伝教のため、ローマ字及びベトナムの国語字を生み出したことが両国
の共通点だと思われる。個人的な意見であるが、この点が面白いと考えら
れる。

9


このように、本論の目的は日越両国の各分野への文字を中心にし、特
にローマ字・ベトナムの国語字の作られたこと、そして、両国に伝教を伝
えるため、キリスト教は両国の各分野へどんな影響を与えているか詳しく
述べたい。
2. 研究の対象
世界におけるキリスト教の発展歴史を述べ、文学・建築・教育などの
日本の各分野へ、その中、ローマ字の作り出したことを中心に日本への影
響を分析する。その中、キリスト教と日本のローマ字を生み出すこととの
関係を検討する。
さらに、ベトナムにおけるキリスト教及びベトナムの国語字が作られ
たこととの関連を検討する。その上、日本のローマ字及びベトナムの国語

字の作られた原因及び価値観について明確したい。
3. 研究の方法
研究は日本の発展におけるローマ字の地位・役割関係の分析を中心と
して、さらにベトナムのアルファベットの作られた背景・原因も分析し、
日本のと比較する。関連する文献や資料を集め、その問題に関する統計資
料などを基にし、歴史的な生み出し、発展することについて考察する。

第二節

キリスト教の概念・教義・教理

1. キリスト教の定義
『宗教学辞典』により、キリスト教( ギリシア語: Χριστιανισμός, ラ
テン語: Religio Christiana, 英語: Christianity)とは、ナザレのイエスを救世主

10


として信じる宗教である1。イエス・キリストが、神の国の福音を説き、罪
ある人間を救済するために自ら十字架にかけられ、復活したものと信じる。
その多く(正教会・東方諸教会・カトリック教会・聖公会・プロテスタン
トなど)は「父と子と聖霊」を唯一の神(三位一体・至聖三者)として信
仰する。
『大辞林第三版』 2 により、キリスト教とはイエスを救済者キリスト
と信じ,イエスの行動と教えを中心に神の愛と罪の赦しを説き,旧・新両
聖書に基づき個人と社会の再生を促す宗教である。パレスチナにおこり,
ローマ帝国の国教となり,さらに世界各地に広まった。現在、各国に多く
の信徒を有し、仏教・イスラム教とともに三大宗教の一である。様々な宗
派がありますが、大きく分けるとカトリックとプロテスタントの 2 つに分
かれる3。

さらに、広辞苑によばキリスト教とはイエスをキリストと認め、その
人の人格と教えを中心とする宗教で、世界三大教の一つである。旧約.新
約聖書が教典だ。正義と慈愛とにみちた父なる神、隣人愛、人類の罪キリ
スト教による贖罪を説く。パレスチナに起こり、ローマ帝国の国教となり、
現在は欧米のほかほとんど世界いたる所に信徒を有する。
2. キリスト教諸教派
キリスト教は、歴史とともに様々な教派に分かれており、現在は次の
ように分類されている4。
2.1

初代教会‐最初期の教会、下記の諸教会の前身

『宗教学辞典』東京大学出版会 1973、p.146
松村明『大辞林第三版』株式会社 三省堂 1982 年、Sanseido Co.,Ltd
3
松村明『大辞林第三版』株式会社 三省堂 230p
4
土井かおる『よくわかるキリスト教』PHP 研究所、2004 年、125 頁、p89
1
2

11


2.2

西方教会

― 西ローマ帝国・西欧で発展した教会
― カトリック教会・ローマ教皇をトップとする派



聖公会(英国国教会)―

カトリックとプロテスタントの中間に位置

づけられる性格
― プロテスタント 16 世紀の宗教改革運動によりカトリックから分離した
諸教派である。主な教派として次のようなものがある。


ルーテル教会(ルター派)



改革派教会(カルヴァン派、長老派教会、改革長老教
会)



会衆派教会



メソジスト教会



バプテスト教会


― アナバプテスト
2.3


東方教会

正教会(ギリシャ正教)―

東ローマ帝国・ギリシャ・東欧で発展し

た教会
― 東方諸教会– 非カルケドン派の諸教会と、アッシリア東方教会
3.キリスト教の教義・教理
キリスト教における正統教義・正統教理では、神には同一の本質を持
ちつつも互いに混同し得ない、区別された三つの位格、父なる神と子なる

12


神(キリスト)と聖霊なる神がある(三位一体)とされる。正教会、東方
諸教会、カトリック教会、聖公会、プロテスタント諸派といったキリスト
教の主要教派の全てが、この教義・教理を共有している。アダムとイブの
堕罪以降、子孫である全ての人間は生まれながらにして罪に陥っている存
在であるが、神にし、人であるイエス・キリストの死はこれを贖い、イエ
スをキリストと信じるものは罪の赦しを得て永遠の生命に入る、という信
仰がキリスト教の根幹をなしている5。
キリスト教の正統教義・正統教理を最も簡潔に述べているものが信条
である。もっとも重要なものとして 381 年に成立したニカイア.コンスタン
ティノポリス信条と、それとほぼ同じ内容を含むがやや簡略で、西方教会
で広く用いられる使徒信条6がある。 信条は教会内に存在した異端を否定す

るために成立した経緯があり、現在も洗礼式や礼拝で信仰告白のために用
いられる。これら信条は現在のキリスト教の主流派のほとんどの教脈が共
有する7。
以下に、ニカイア・コンスタンティノポリス信条によるキリスト教の
基本教義を示す8。


神は三位一体である。



父は天地の創造主である。



子なる神イエス.キリストは万物に先立って生まれた父の独り子であ

る。したがって、被造物ではない。また、子は父とともに天地を創造した。


キリストの聖母マリアからの処女生誕である。

上智学院新カトリック大事典編纂委員会『新カトリック大事典』第 3 巻、研究社、2002 年、
412 頁、132p
6
西方教会の信条の成立された時期が不明が二世紀から四世紀と言う意見もあった。
7
宇田進ほか『新キリスト教辞典』いのちのことば社、1991 年、631 頁
8
上智学院新カトリック大事典編纂委員会『新カトリック大事典』第 3 巻、研究社、2002 年、

412 頁「信条」
5

13




キリストは罪人としてはずかしめられ、十字架の上で刑死したが、三

日目に復活した。昇天し、栄光の座である「父の右に座している」 。キリ
ストは自らの死と復活によって死を克服し、人類をもまた死から解く正当
な権能を得たと信じられる。


キリストは再臨し、死者と生者すべてをし審判し、その後永遠に支配
する。



聖霊も神(位格をもった存在)である。聖霊はイエスの地上での誕生

に関係し、また、旧約時代には預言者を通じてその意思を伝えた。聖霊も
また被造物ではない。なお、聖霊は父から生じたか、それとも、父と子両
者から生じたかは後世議論の的となり、カトリック教会を正教会の分裂の
契機となった。


教会の信仰である。新約聖書では教会をイエスの意思によってたてら


れた地上におけるイエスの象徴的身体であり、聖霊がその基盤を与えたと
する。そのような理想的教会は、時間と空間を超えた統一的な存在であり、
神によって聖とされ、万人が参加することができ、イエスの直弟子である
使徒たちにつらなるものであると信じる。これを実現することが信者の務
めである。キリスト教信仰は、他者との歴史的また同時代的共同の中にの
み成り立つもので、孤立した個人によって担われるものではない。なお使
徒性ないし使徒継承性については、西方教会では意見の相違がある。


洗礼のことである。父及び子、聖霊の御名による洗礼である。洗礼に

よる罪の赦しを信じる教会においては、神すなわち「父と子と聖霊」の名
において教会においてなされる洗礼は、時代や場所や執行者に左右されず、
一つのものであり、それまでに洗礼を受けるものが犯した罪を赦すとされ
る。洗礼を受けることは信者となって教会に入ることであり、またキリス
トの死による贖いを信じうけ認めることでもある。ここから、罪を赦され
た後=入信後は、信者はその赦しに応えて再び罪を重ねないように努力す
るべきであると信じられる教会もある。ただし、聖霊による新生を信じる

14


教会では、成人の場合新生したキリスト者のみが洗礼資格を持つとし、洗
礼による新生を退ける。


死者の復活と来世の生命である。上述のように、キリストの再臨にお

いて、すべての死者は審判を受けるべく復活させられる。信じるものには
来世の生命が与えられる。伝統的にキリスト教では、この来世を、永遠、

つまり時間的な持続をもたない永遠的現在と解する。
また、これに加え、キリストの死を記憶することも信者の重要な義務
である。これは礼拝においてパンとぶどう酒を用いてなされる。プロテス
タント以前に成立した教会では、パンとぶどう酒が祈りによりキリストの
体(聖体)と血に変化すると信じる。カトリックでいうミサ、正教会でい
う聖体礼儀はこの記憶を行うための礼拝である。教義を異にし聖体の概念
を否定するプロテスタントでも、類似の儀式を行う。これを聖餐というこ
とである。キリスト教最大の祭である復活祭は、この聖餐をキリストが復
活したと信じられる日に行うもので、毎年春に行われる。
教義には教派ごとに若干の変異がみられる。ローマ・カトリック、聖
公会、プロテスタントなどの西方教会は、聖霊を「父と子両者から発し」
とし、東方の「父から」のみ発するとする立場に対立する。また、プロテ
スタントとローマ・カトリック他の伝統的教会では教会についての教義に
差があり、使徒の精神を共有することをもって使徒性と解するプロテスタ
ントに対し、カトリック他では聖職者が先任者から任命されることに神聖
な意義を認め、その系譜が使徒にまでさかのぼること(あらゆる使徒継承
性である)を教会の正統性の上で重視する。また、聖餐論においても、カ
トリックや正教会など伝統的教会とプロテスタント諸派の間には大きな意
見の差がある。

15


第二章

キリスト教の発展歴史及び各分野への影響

第一節

キリスト教の発展歴史


1. キリスト教成立
1.1

キリスト教成立の背景

イエスは敬虔なユダヤ教徒の家に生まれ育った。当時一般のユダヤ教9
徒の間に広まっていた信仰に終末観があった。イスラエルはすでに前 8 世
紀末に北半分がアッシリアに侵略され、前 6 世紀初めには南ユダもバビロ
ニアに滅ぼされて多くのコダヤ人が捕囚の身となり、ペルシアによって解
放されたのちも独立国とならず、ギリシアの支配時代に及んだ。さらにシ
リアのセレウコス王朝によるコダヤ教への迫害は激しく、前 2 世紀から独
立戦争によりハスモン王朝が成立する。しかし、ふたたび前 63 年にローマ
の支配下に置かれ、イエスの時代に及んだ10。
1.2

キリスト教の成立

紀元一世紀、イエスの死後に起こった弟子の運動(初期キリスト教運
動)が、キリスト教の直接的な起源である。新聖書辞典によれば、最初に
書かれた福音書であるといわれる『マルコ福音書』 11 が成立した頃の西暦

ユダヤ教は、古代の中近東で始まった唯一神ヤハウェを神とし、選民思想やメシア(救世主)信
仰などを特色とするユダヤ人の民族宗教である
10
/>11
新約聖書中の一書
9

16



70 年頃以前を「ユダヤ教イエス派の運動」と言うことである。キリスト教
がローマ帝国で広まり、ローマ皇帝テオドシウス 1 世が 380 年に国教と定
める以前に建てられたキリスト教会を「初代教会」又は「原始教会」と呼
ぶ。そして、最初の教会は、エルサレムに成立したとされる12。
2. キリスト教の発展歴史
2.1

近世までのキリスト教発展歴史(1 世紀~16 世紀)

紀元一世紀、イエスの死後に起こった弟子の運動が、キリスト教の直
接的な起源である。この時期のキリスト教徒はコダヤ教との分離の意識を
もたなかったとする学説が現在は主流を占める。それによれば、70 年のエ
ルサレム13神殿崩壊後、ユダヤ教14から排除され、またキリスト教徒のほう
でも独立を志向して、キリスト教としての自覚を持つに到ったとされる。
ローマ帝国治下でキリスト教は既存の多神教文化と相容れず、社会の
異分子としてしばしば注目された。キリスト教は国家に反逆する禁教とさ
れ、信徒は何度かの弾圧を経験した。しかし、4 世紀初めにコンスタンティ
ヌス 1 世により公認され、その後、テオドシウス 1 世によりローマ帝国の
国教とされ、キリスト教以外の他宗教(ミトラ教など)を圧倒するに到っ
た。
キリスト教は歴史上、5 回の大きな分裂を経験した15。ただし、教会
歴史学者の多くは、第 1 回から第 3 回までを「異端の糾弾」として捉えて、
第 4 回と第 5 回のみを「分裂」としてみている。しかし、この捉え方は、
中世以降に多数派となったカトリックや正教会が自己の正統性を主張する
田川建三『イエスという男』第 2 版増補改訂版、作品社、2004 年、p352
エルサレム、またはイェルサレムは、イスラエル東部にある都市
14
ユダヤ教は、古代の中近東で始まった唯一神ヤハウェを神とし、選民思想やメシア(救世主)信

仰などを特色とするユダヤ人の民族宗教である。
15
宇田進ほか『新キリスト教辞典』いのちのことば社、1991 年、p669
12
13

17


観点に立ったもので、わずかな信徒数を残すのみとなったネストリウス派
ならびに単性論教会、そして、完全に消滅したアリウス派を「異端」とし
て一方的に蔑視しており、中立的な歴史観ではない。

2.2

近現代におけるキリスト教の発展(17 世紀~現在に至るまで)

宗教改革後の啓蒙時代16に入ると、神による啓示を基礎に置いた従来
のキリスト教のあり方に疑問が出されるようになる。人格神を否定する理
神論から始まり、啓蒙期以降は神を論じることの無意味さを説いた不可知
論、汎神論、あるいは無神論など、それまでのキリスト教神学に収まりき
らない思想が展開される。そして、フランス革命などの市民革命 17によって
西ヨーロッパ社会が大きく脱教会化され、民衆のキリスト教離れが進行し
た。マルクス18は「聖書は神聖だが、宗教はアヘン」とする共産主義を標榜
し、原始キリスト教と同様の共有を理想に掲げ、キリスト教と競合する社
会運動として現れる。キリスト教が社会に対し、その影響力を大きく減じ
ていくことになる中で、各宗派が発展し続いてきた。
3. 現代におけるキリスト教の動向
現代の世界のキリスト教の分布状況は、カトリック、正教会、プロテ
スタントのそれぞれの教勢は落ち着きがみられ、著しい動きはエキュメニ

カル・ムーブメント(世界教会運動)19である。キリスト教は長い歴史のな
かで分立しさまざまな対立さえ生み出してきたが、各派ばらばらの海外伝
道による混乱への反省と共産主義への対抗意識から、各派は、共通のキリ
ヨーロッパで啓蒙思想が主流となっていた 17 世紀後半から 18 世紀にかけての時代のこと。
近代的市民社会をめざす革命を指す歴史用語である。人権、政治参加権あるいは経済的自由を主
張した「市民」が主体となって推し進めた革命と定義される。
18
Karl Heinrich Marx, 1818 年 5 月 5 日 - 1883 年 3 月 14 日)は、共産主義運動・労働運動の理論的指
導者、経済学者、哲学者である
19
『第 2 バチカン公会議公文書全集』南山大学監修、中央出版社、p.116
16
17

18


スト者としての信仰において、一致して現代社会に対処しようとする世界
教会運動を生んだ。
1948 年アムステルダムで「世界教会協議会」が結成され、61 年ニュ
ーデリーの会議ではロシアと東欧の正教会が加盟し、第二バチカン公会議
(1962~1965)以来、ローマ・カトリック教会も積極的に参加するように
なった。1964 年のローマ教皇のイスラエル訪問と、東方正教会大主教との
会見、1982 年のイギリス女王との面会は、カトリック教会の歴史上画期的
な、対立する教派・宗派との和解を示すものである。

第二節

世界におけるキリスト教の影響


1. 建築への影響
中世のヨーロッパにおいて大規模な建築は教会や修道院に限られたた
めに、ある時期までのヨーロッパ建築史は教会建築史に重ねられる20。特に
11 世紀よりロマネスク様式、12 世紀末よりゴシック様式、15 世紀からはル
ネサンス様式の大聖堂がヨーロッパ各地で盛んに建造された。「神の家」
を視覚化した壮麗な建築は今も見る者を圧倒する。それらは現在も教会と
して使用されつつ、各都市のシンボルとして保存され、ヨーロッパ都市の
原風景の一部となっている。
さらに、キリスト教の教会に由来する共同体概念、とりわけプロテス
タントの理念である「見えざる教会21(Unsichtbare Kirche)」は、バウハウ
スなど近代建築にも影響を与えた。ヴァルター・グロピウスはバウハウス

20

/>Jacob und Wilhelm Grimm: Deutsches Wörterbuch. Berlin 1854, Digitale Ausgabe: Zweitausendeins,
Frankfurt am Main 2004.
21

19


の雑誌の表紙に教会を現した自作の版画を沿え、「見えざる教会」がバウ
ハウス運動の理念でもあると語っている。

イメージ1:パリのノートルダム大聖堂。ゴシック建築を代表する建物
出典: />
2.美術への影響
初期キリスト教美術はローマ美術をもとに始まったが、やがて写実性
より精神性などを重視するようになり様式化が進んだ22。中世西ヨーロッパ
ではキリスト教は美術の最大の需要を生み出していたといえる。上記の聖

堂には、聖人の肖像画や聖伝を描いた壁画や絵画、窓にはめ込まれたステ
ンドグラス、聖像、祭壇や様々な聖具類が供えられた。また、祈祷書など
の写本への挿絵も描かれた。これらはヨーロッパ美術史の中でも重要な位
置を占める。

22

/>
20


イメージ2:カンタベリー大聖堂のステンドグラス
出典: />
一方、ローマ帝国時代に盛んだった室内装飾などの世俗美術は、中世
初期にはいったん廃れた。しかし、12 世紀頃より古典古代への関心が復活
(12 世紀ルネサンス)するとともに異教のテーマに基づいた絵画が現れは
じめ、13 世紀後半から公然と描かれるようになった(例として、ボッティ
チェッリ『ヴィーナスの誕生』23である)。そして、西ヨーロッパにおいて
は、世俗の美術がキリスト教美術を量的に圧倒するようになっただけでは
なく、その様式が宗教画に逆に取り入れられるようにもなった。

The Birth of Venus)は、1483 年描いたルネッサンス期のイタリアの画家サンドロ・ボッティチェ
リの作品で、キャンバス地に描かれたテンペラ画である。縦 172.5cm、幅 278.5cm の大作で、現在、
フィレンツェのウフィッツィ美術館が所蔵し、展示している
23

21


対して東方教会では、聖像の規範性を重んじ、古来の型を保つことを

教義の一部としたため、教会美術は時代による変化をあまりこうむらなか
った。しかし、ルネサンス以後の西方美術は東方にも影響を与え、特に 18
世紀以降、ロシアを中心に、印象派風の筆致を持ちやや写実的な聖像表現
も行われた。また、近世以降はヴィクトル・ヴァスネツォフ24などのように、
イコンから離れた美術の領域で正教会の題材を用いる藝術家も現れた。
3. 音楽への影響

イメージ3:グレゴリオ聖歌の楽譜の一例
出典: />
Viktor Mikhailovich Vasnetsov, 1848 年 5 月 15 日 - 1926 年 6 月 23 日)はロシア帝国の画家。神話
や宗教・歴史を題材とした絵画の専門家である。
24

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「正教会聖歌作曲家25」により、キリスト教会では典礼での必要上、
独特の教会音楽を発展させた。聖句を詠唱するための節回しがかなり早い
時期に規定された。高低アクセントをもつギリシア語を公用語としたギリ
シア教会では、8 種類からなる教会旋法が整備され、韻文で書かれたすべて
の祈祷文を、そのどれかにあてはめて歌うことが出来るシステムが確立し
た。これはラテン教会にも影響を与え、後者は今日グレゴリオ聖歌として
知られている。グレゴリオ聖歌は単旋律26(モノフォニー)であるが、9 世
紀頃には、これにオルガヌム声部を加えた複旋律 27(ポリフォニー)が現れ
る。同時に、それまでは口承されていた旋律を正確に記録するための楽譜
が考案され、理論化が行われるようになる。教会音楽とは神の国の秩序を
音で模倣するものであり、理想的で正確に記述されるべきものという信念
が背景にあったと考えられているが、これらが今日の五線譜を用いた記譜
法、和声法や対位法などの音楽理論へと発展していくことになる28。
教会の外部にも世俗的な音楽がヨーロッパに存在していたことは確か

なことではあるが、記譜法と理論を兼ね揃えた教会音楽は後世への影響力
という点では圧倒的に優勢であった。14 世紀頃より、こうした教会の音楽
理論が世俗音楽へ流れ始め、やがて教会の外で西洋音楽は発展していくこ
とになる29。
作曲家で言えば、16 世紀に対位法・ポリフォニーにおいてイタリア
のパレストリーナやスペインのヴィクトリアといった大家が現れた。しか
し、バッハやヘンデルまでは教会音楽が作曲活動の中で重要な位置を占め
ていたが、それ以降は教会音楽の比率は小さいものとなる。とはいえ、ミ
正教会の聖歌(聖金口イオアンの聖体礼儀・晩祷・パニヒダ等の一部または全部、ほか連祷な
ど)を作曲した作曲家達のカテゴリ(世俗歌曲も手がけた作曲家も含む)。
26
音楽において、例えばグレゴリオ聖歌に見られるように、1 声部しかないテクスチュアのことで
ある。
27
複数の異なる動きの声部(パート)が協和しあって進行する音楽のこと。ただ一つの声部しかな
い「モノフォニー」の対義語として、多声(部)音楽を意味する。
28
岡田暁生『西洋音楽史 「クラシック」の黄昏』中央公論新社〈中公新書〉、2005 年、p73
29
コンスタンチン・コワリョフ『ロシア音楽の原点 ボルトニャンスキーの生涯』ウサミ・ナオキ訳、
新読書社、1996 年、37p
25

23


サ曲やレクイエムはベルリオーズやブルックナーをはじめとした数々の作
曲家にとって重要なテーマであり続けたし、キリスト教関連のテーマを使
った曲はその後も続いていく。また器楽曲では、西方教会ではパイプオル
ガンが好んで用いられ、各地域で優れた大型のオルガンへの需要を生み出

した。ヨーロッパでは 16 世紀、17 世紀に建造されたオルガンが補修を受け
ながら現在も使われていることが多い30。
また、20 世紀に入るとアメリカのアフリカ系市民の間で歌われてい
た賛美歌(ゴスペル)が、レイ・チャールズなどの手によってポップ・ミ
ュージックに導入された。一方で、古楽への一般的な関心の高まりをも反
映して、グレゴリオ聖歌などの古い宗教曲が意識的に聴かれるようになり、
教会旋法の要素を取り入れる作曲家などもみられる31。
一方、器楽の使用を原則として禁じた正教会においては、東ローマ帝
国地域でビザンティン聖歌が独自の発展を遂げた。正教が伝播したロシア
では、ビザンティン聖歌にロシア固有の要素を取り入れたズナメニ聖歌と
いわれる無伴奏声楽曲が発達した。ビザンティン聖歌もズナメニ聖歌も四
線譜もしくは五線譜を用いず、それぞれ「ネウマ」と「クリュキー」と呼
ばれる記譜法を保持していた。
18 世紀以降になると西方との交流により、イタリア的要素を取り入
れた宗教曲が作られ、19 世紀初頭にはロシアでボルトニャンスキーが活躍
した。チャイコフスキー32やリムスキー=コルサコフ33といった作曲家達を
生み出す土壌となった。正教会聖歌ではラフマニノフ34の『徹夜禱』が有名
であり、聖歌を専門にした作曲家ではアルハンゲルスキーが著名であるが、
30

/>コンスタンチン・P・コワリョフ『ロシア音楽の原点 ボルトニャンスキーの生涯』ウサミ・ナオ
キ訳、新読書社、1996 年、p173
32
Peter Ilyich Tchaikovsky、1840 年 5 月 7 日- 1893 年 11 月 6 日(ユリウス暦 10 月 25 日))はロシ
アの作曲家である。
33
Nikolai Andreyevich Rimsky-Korsakov, 1844 年 3 月 18 日 - 1908 年 6 月 21 日)はロシアの作曲家で
ある。
34
Sergei Vasil'evich Rachmaninov は、1873 年 4 月 1 日- 1943 年 3 月 28 日、ロシアの作曲家である。

31

24


ブルガリアのフリストフやセルビアのフリスティッチ、エストニアのペル
トも正教会聖歌を作曲するなど、その発展はロシアに限定されず東欧全域
に及んでいる。また、西欧的な要素を取り入れつつも新たな伝統復興を模
索する動きが 19 世紀後半から正教会では行われていたが、共産主義政権の
弾圧による研究の中断があったものの、共産主義政権の崩壊後にそうした
復興運動は再活性化を見せている。
4. 文学への影響

イメージ4:ダンテ作『神曲』の挿絵
出典: />
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