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ハノイ国家大学
外国語大学
大学院

VŨ THỊ TÂM ĐAN
日本語における形容詞を含む慣用句
THÀNH NGỮ CĨ CHỨA TÍNH TỪ TRONG TIẾNG NHẬT

修士論文

専攻科目

:日本語学

コード

:60.22.02.09

ハノイ-2017 年


ĐẠI HỌC QUỐC GIA HÀ NỘI
ĐẠI HỌC NGOẠI NGỮ
KHOA SAU ĐẠI HỌC

VŨ THỊ TÂM ĐAN
日本語における形容詞を含む慣用句
THÀNH NGỮ CĨ CHỨA TÍNH TỪ TRONG TIẾNG NHẬT

修士論文


専攻科目

:日本語学

コード

:60.22.02.09

LUẬN VĂN THẠC SĨ

Chuyên ngành

: Ngôn ngữ Nhật Bản

Mã số

: 60.22.02.09

Người hướng dẫn : TS Trần Kiều Huế

HÀ NỘI - 2017


保証書

私は Vũ Thị Tâm Đan で、大学院学科の院生です。私の修士課程論文は「日本語
における形容詞を含む慣用句」をテーマとして作成しました。指導教師の教えを
元に、自分で論文を書くことを保証いたします。他の論文からコピーしません。
ハノイ-2017 年
Vũ Thị Tâm Đan


i


謝辞

本稿を作成している間に、先生、家族と友人の皆様から励ましとご協力をいた
だ きまして、感謝の気持ちを表したいと存じます。
まず、指導教官であるチャン・キュウ・フエ先生に心から感謝申し上げます。
非常に大切な本をた くさん提供してくださいました。そのうえ、日本語学の研究
方法から、論文執筆の 仕方まで、先生から厳格かつ親切なご指導をいただきまし
た。この論文の完成に際 して、フエ先生の深い学恩に衷心より厚くお礼を申し上
げます。
最後に、如何なる時も終始私を支えてくれ、励ましてくれた家族並び友人たち
に 心からお礼を申し上げます。

ii


論文の概略

本稿では、まず日本語の慣用句に関する理論をまとめる。世界の各研究者から
定義した慣用句を本論で使う定義も述べた。そして、慣用句と慣用句の相当表現
を分別した上で、慣用句の分類し方もまとめる。
それから、先行研究に基づいて、形容詞を含む慣用句を形式別に分類し、整理
してみた上で、実例を通して、研究対象 とする形容詞慣用句を構成上の観点から
考察を行う。そして、ベトナム語形容詞を含む慣用句と比較しながら、相違点・
類似点を明らかにした。
最後に、ベトナム語のと比較しながら、形容詞慣用句を意味上の観点(慣用句全
の意味及び構成要素の意味の観点)から考察してみた。さらに、ベトナム語との相

違点・類似点も明らかにした。

iii


図表リスト

1.



図 1:慣用句の分類図
2.



表 2.1:日本語・ベトナム語における形容詞を含む慣用句の二つ構成の割合
表 2.2:日本語の連語の構成の慣用句の種類
表 2.3:日本語連語の構成の形容詞を含む慣用句に出る形容詞
表 2.4:ベトナム語の連語の構成の形容詞含む慣用句に出る形容詞
表 2.5:文の構成の形容詞を含む慣用句の種類
表 3.1:日本語における慣用句の全体的な意味から考察する形容詞を含む慣用
句割合
表 3.2:ベトナム語における慣用句の全体的な意味から考察する形容詞を含む
慣用句割合
表 3.3: 慣用句の構成要素の意味的観点から考察する日本語慣用句の構成割合
表 3.4:日本語の形容詞を含む慣用句に出る形容詞
表 3.5:日本語の形容詞を含む慣用句に出る形容詞の種類の割合
表 3.6:ベトナム語の形容詞を含む慣用句に出る形容詞
表 3.7:ベトナム語の形容詞を含む慣用句に出る形容詞の種類の割合

表 3.8:日本語における形容詞を含む慣用句に出る形容詞の表徴的な意味

iv


目次

保証書 ..................................................... i
謝辞 ...................................................... ii
論文の概略 ............................................... iii
図表リスト ................................................ iv
序論 ....................................................... 7
1.研究の背景................................................................................................................................ 7
2.先行研究.................................................................................................................................... 8
3.研究の目的................................................................................................................................ 9
4.研究の対象と研究方法............................................................................................................ 9
5. 論文の構成.......................................................................................................................... 10

第一章 .................................................... 11
日本語における慣用句 ...................................... 11
1.1. 慣用句についての定義...................................................................................................... 11
1.1.1. 世界における慣用句定義についての観点 ................................................................ 11
1.1.2. 日本語の慣用句の定義についての観点 ................................................................... 12
1.1.3.

ベトナムにおける慣用句概念についての観点 ..................................................... 14

1.1.4.

本論での慣用句概念について ................................................................................. 15


1.2. 慣用句の分類...................................................................................................................... 16
1.2.1. 形態による分類 ............................................................................................................ 16
1.2.2. 品詞別の特徴に基づいての分類 ................................................................................ 17
1.3. まとめ.................................................................................................................................. 17

第二章 .................................................... 19
日本語における形容詞を含む慣用句の構成上の考察 ............. 19
2.1. 日本語形容詞についての概念.......................................................................................... 19
2.1.1. 日本語形容詞の定義 .................................................................................................... 19
2.1.2. 形容詞の分類 ................................................................................................................ 19
2.2. 日本語における形容詞を含む慣用句の構成上の考察 .................................................. 20
2.2.1. 連語の構成の形容詞を含む慣用句 ............................................................................ 22
2.2.2.

主述の構成の形容詞を含む慣用句 ......................................................................... 29

v


2.3 日本語形容詞を含む慣用句の形態的構成の変化 ........................................................... 36
2.4 まとめ ................................................................................................................................... 38

第三章 .................................................... 40
日本語における形容詞を含む慣用句の意味上の考察 ............. 40
3.1. 意味形成組織・構成に基づいた日本語慣用句の分類 ................................................. 40
3.2. 慣用句全体の意味的観点から考察する、形容詞を含む慣用句の意味 ..................... 41
3.3.

構成要素の意味的観点から考察する、形容詞を含む慣用句の意味 ....................... 47


3.4. 構成要素の表徴的意味...................................................................................................... 56
3.5. まとめ.................................................................................................................................. 60

本章で、ベトナム語慣用句と比較しながら、日本語における形容詞を
含む慣用句の意味の面から考察を行った。 ..................... 60
今後の研究課題 ............................................ 62
参考文献 .................................................. 63
付録 ...................................................... 65

vi


序論

1.研究の背景
ここ数年、日越友好関係は緊密な関係になっている。経済・文化交流など様々
な分野において発展している。その結果、日本語が出来る人材の需要も年々高ま
ってきていると共に日本語教育も発展している。ベトナム人の日本語学習者の数
は急速に増加してきた。国際交流基金の調査(2013 年)によると、ベトナムにお
ける日本語学習者は 4 万 6,762 人である。
ベトナムの日本語教育は文法力ではなく豊富な表現力を重視する。お互いに話
したり、手紙を書いたり、自分の考えを相手に伝えたりする際に、正しい表現を
使用するのは重要である。そのために、日本の社会や文化、そして日本人の慣習
についての深い理解や知識が欠かせないものである。その日本人の習慣の一つは
比喩表現をよく使うことである。
比喩表現の出現の頻度は高く、新聞や雑誌、テレビ番組など、話言葉において
も書き言葉においても幅広く使われている。その比喩表現の代表は慣用句である。
慣用句の使用度数について調査を行った程(1996)によれば、日常の言語生活に
3500 ども使用されているようである。

日本語を勉強する学習者も日本語のレベルを高め、日本人の表現心理や考え方
の微妙なところを理解するために、慣用句を正しく学習し、正しく使用すること
が必要であると思われる。ゆえに、慣用句の研究は意義深い。
現在までベトナム語と日本語における慣用句を様々な角度から分析し、その構
成上・意味上の特徴を抽出する研究が行われている。それらの研究は、学習者・
翻訳者・通訳者らに対しては、非常に大きな貢献を果たしている。但し、ベトナ
ム語と日本語の慣用句は総数が多く、種類も様々であるために、全ての慣用句を
比較対照しつつ単独の論文にまとめる作業は、はなはだ長い年月を要する。その
ために、従来研究されたものの殆どは、人間の「身体の各部位」や「気」、「動

7


物」等、個別慣用句の中のキーワードに着目した研究が行われて来た。ところが、
日本語に重要な役割を占めている形容詞を含む慣用句に関わる研究は目にしたこ
とがない。そのため、本研究は形容詞を含む慣用句についての意味・用法などを
考察する。
2.先行研究
日本語の慣用句に関する研究は、数多くある。以下はその一部である。
森田良行(1966)は「慣用的な言い方について」では、慣用的な言い方は辞書
的意味の理解や文法的知識のみでは理解できないことを指摘している。そして、
慣用句を五つのタイプに分けている。
さらに、 森田良行(1966) は慣用句教育へも自分の提言をした。 ただし、 森
田は 慣用表現についての分類は幅広すぎて、その本質についての解釈も明快なも
のとは 言えないと思われる。
宮地裕(1982)は「慣用句という用語は、一般に広く使われているけれども、
その概念がはっきりしているわけではない。ただ、単語の二つ以上の連結体であ
って、その結びつきが比較的固く、全体で決まった意味を持つ言葉だという程度
のところが、一般的な共通理解になっている。慣用句は、一般の連語句よりも結
合度が高いものだが、格言、ことわざと違って、歴史的、社会的な価値観を表す

ものではない。」と指摘した。宮地は慣用句の概念を明らかにしただけでなく、
格言、ことわざとの違いも説明してくれた。さらに、品詞別の特徴、語彙的な特
徴、形式上の特徴、形式上の制約から見た特徴に分けて論じている。宮地裕の研
究は、慣用句の概念規定や分類にとどまらず、具体的な用例を集めて、日本語、
中国語、韓国語、英語、フランス語、タイ語などの多言語間の対照研究も行った。
宮地裕氏は、慣用句を連語成句的慣用句と比喩的慣用句にわけ、比喩的慣用句
を直喩的慣用句と隠喩的慣用句に分けている。詳しくは次のような図で示されて
いる。

8


図 1:慣用句の分類図
一般複合語
連合成句慣用句
慣用句
成句

直喩的慣用句
比喩的慣用句

格言、諺

隠愈的慣用句
( 宮地裕(1982))

金子百合子 (1985) は 品詞別の特徴(動詞慣用句・形容詞慣用句・名詞慣用句)、
語彙的な特徴(身体語彙の慣用句・心情語彙の慣用句・漢語語彙の慣用句・用語
語彙の慣用句)、形式上の特徴(比喩形式の慣用句・否定形式の慣用句・かさね
形式の慣用句)に分けて、慣用句を考察した。

ほかに慣用句を細分して論じた森田良行の「動詞慣用句」(1985)、 西尾寅弥
の「形容詞慣用句」(1985) 、 大坪喜子の「名詞慣用句」 (1985)などの論文
も発表されている。
3.研究の目的
本論で日本語の慣用句の中から、「頭が痛い」や「尻が重い」のような形容
詞を用いた慣用句に絞って研究を行った。実際の例を通して、ベトナム語と比較
をしながら、日本語における形容詞を含む慣用句を意味の面、または構成の面か
ら考察することを目的としている。そこから、両言語における形容詞を含む慣用
句の相違点を明らかにする。
本研究は、日本語学習者に日本語の形容詞慣用句への認識を深めさせ、その効
用の正しい受け止め方を示唆することができるという点において意義があると思
われる。本稿の研究を通して、形容詞を含む慣用句の理解と取得に役に立てば幸
いと思う。
4.研究の対象と研究方法
慣用句は、言語文化の進展や様々の社会的・時代的要因の影響を受けると言え
よう。そのために、辞書に登載されている慣用句の数と、現在日常的に使用され

9


ている慣用句の数とは、必然的に差異があると推定されるが、本研究には客観性
を得るためにも、日本語とベトナム語の各辞書に登載されている形容詞慣用句を
研究対象と定めた。ベトナム語の辞書『ベトナム語慣用句辞典』(Nguyễn Như Ý,
Nguyễn Văn Khang, Phạm Xuân Thành、教育出版社、1998)に載っているベトナム
語の形容詞を含む慣用句 208 個と日本語の辞書『例解慣用句辞典』(井上 宗雄、
創拓出社版、1992)に載っている日本語の形容詞を含む慣用句 238 個を考察した。
考察・分析した結果に基づいて、ベトナム語における形容詞を含む慣用句と比
較し、日本語における形容詞を含む慣用句の構成上・意味上の特徴を明らかにす
る。
論文の構成


5.

本研究は序論・本論・結論の 3 つの部分から構成されている。
序論では、先行研究、研究目的、研究対象、研究方法について述べている。
本論は第 1、2、3 章の三章から構成されて、次のように展開される。


第 1 章:

日本語の慣用句

本章では、日本語とベトナムにおける慣用句の定義、慣用句相当表現との分別、
そして慣用句の分類などについて述べる。


第 2 章: 形容詞慣用句の上の考察

ここで、辞典から取り出した日本語形容詞慣用句を構成面からの考察を行い、
その考察の結果について分析する。そして、ベトナムの形容詞を含む慣用句と比
較して、相違点を明らかにする。


第 3 章: 形容詞慣用句の意味上の考察



ここで、辞典から取り出した日本語形容詞慣用句を意味面からの考察を行

い、その考察の結果について分析する。そして、ベトナムの形容詞を含む慣用句

と比較して、相違点を明らかにする。


結論では、研究のまとめ、及び今後の課題について述べる。

最後に考察文献、付録を記す。

10


第一章
日本語における慣用句

1.1. 慣用句についての定義
1.1.1. 世界における慣用句定義についての観点
世界中での慣用句に関する研究、すなわち慣用句、並びに慣用句に関連した慣
用的な連語の研究を概観した場合、それらの研究は 1920 年代から始まったが、よ
り詳細の研究は 1930-1940 年代から行われたと見られる。その中でも代表的な作
家はロシアの V.V.Vinogradov(1946).H.M.Shanski(1969), イギリス CharlesF.Hockett
(1956).D.A.Cruse (1986) らであるとされている。
慣用句の定義に関して、研究者達は慣用句的な連語の定義と分類を中心にして、
様々な定義を挙げて来た。それらの見解相互には全く反対の見解も見受けられて
いるのであるが、本論ではその中から幾つかのものに注目し、考察見てみる。
1.1.1.1.イギリスの CharlesF.Hockett (1956)
CharlesF.Hockett (1956)の研究も高く評価される。”A course in morden linguistics’’
(1958)では慣用句の最も典型的な特徴を次のように示した。「全体としての意味
が、構成要素の意味からは引き出せない」というものである。このような定義は、
後年の D.A.Cruise (1986) によっても肯定されている。
1.1.1.2.イギリスの D.A.Cruise (1986)
D.A.Cruise (1986)は CharlesF.Hockett と同じ観点から同氏による典型的な定義は

次のようなものである。
......an idiom is an expression whose meaning cannot be inferred from the meanings of
its part.
(慣用句とは、構成要素の意味から全体としての意味を引き出すことの出来な
い表現である)(ibid., p.37)
Cruise は semantic constituent (意味要素)という概念に即して慣用句を定義するこ
とが可能であるという見解を示している。見解によると慣用句は二つの特徴をも

11


つ。第一に「二つ以上の語彙要素で構成されており(Lexically complex)」、第二
には「それは単一で最小の意味要素(Single minimal semantic constituent)である」
とされる。以上により、慣用句をこのように定義づけている。
「A letical complex which is semantically simplex

」(単一の意味を持つ合意的

複合体)(ibid., p.37)
1.1.2.

日本語の慣用句の定義についての観点

日本では慣用句に関する研究として、「慣用表現」と「慣用句」表現が用いら
れているようであるが、研究者により対象範囲が異なっており、その概念は一筋
ではないようである。日本での慣用句研究は 1960 年代後半から始まったと考えら
れていて、他の国よりは遅いが、日本における慣用句についての研究は活発に行
われていて、比較的に早いものには、森田良行(1966)白石大に(1977)、宮地裕
(1982・1985・1986)、国広(1985)、籾山(1997)などがある。
1.1.2.1.


森田良行(1966)

森田良行(1966)は「慣用的な言い方について」では、慣用的な言い方は 50
辞書的意味の理解や文法的知識のみでは理解できないことを指摘している。そし
て、慣用句を 5 つのタイプに分けている。
(1) あいさつ語、応答語。(例えば:ありがとう、おはようございます)
(2) 慣用化された特定の言い回し。(例えば:~して余りがない、~を事と
もしない)
(3) 慣用化されている文語表現。(例えば:~ざる得ない、さればこそ~)
(4) 变述の語が慣用として固定しているもの。(例えば:汗をかく、うそを
つく)
(5)比喩が慣用化したもの。(例えば:油を売る、顔が広い)
1.1.2.2.

白石大二

(1977)

慣用句の定義に関して白石(1977)は、国語学と英語学で設定された様々な定義
をまとめる。『現代日本語の研究』において、慣用句はつぎのように定義してい

12


る。「慣用句とは一般的な日常語であっても、また特殊語や学術用語であっても、
習慣的に用いられ、固定され、特殊な語感や意味内容を持つものを指す(白石大
二(1977、p.529-530))。
そして 1969 年には『国語慣用句辞典』のなかでは、白石は、「一つの社会。
種族。国家を構成する人々、または一つの地域や国の言語、この言語の特殊な性

質、一つの言語に独特な表現形式などの意味がある」。(『国語慣用句辞典』)、
前書き)と慣用句について述べている。
1.1.2.3.

宮地裕(1982・1985・1986)

日本語の慣用句研究者のなかでも、各評価されている宮地裕は、慣用句を次の
ように定義した。
「慣用句という用語は、一般に広く使われているけれども、概念が明確なわけ
ではない。ただ言えることは、単語二つ以上の連語体であって、それらの結びつ
きが比較的固く、全体で決まった意味を持つ言葉」。
1.1.2.4.

国広(1985)

国広(1985)は、「二語以上の連結使用が固定しており、全体の意味は構成語
の意味の総和から出て来ないもの」と定義した。
国広(1985)は、宮地(1982)の定義をさらに詳しくし、形式と意味の両面か
らの分類を行っている。
1.1.2.5.

籾山(1997)

籾山(1997)は、「複数の語の連結使用が固定しており、全体の意味は、個々
の構成語がその連結の一部でない時に持つ意味の総和からは導き出せないもの」
と定義した。
籾山は、表現全体の意味が構成語の意味の総和から導き出せない場合のみ慣用
表現と指摘し、構成語の一部のみが字義的でないものは慣用表現に含めていない。
この点に関して、宮地では「目が高い」は、それぞれに「鑑識力」「厳しい試練」


13


という転義であるだけで、構成語の意味の総和として句全体の意味が理解可能で
あり、慣用表現であるよりもむしろ連語の部類に属すると指摘した。
1.1.3.

ベトナムにおける慣用句概念についての観点

日本での慣用句論の研究と同様に、ベトナムでの慣用句論の研究は、未だあま
り進展していないと言えよう。我が国においては、Phạm Quỳnh Nhan (1921) の
「Về tục ngữ và ca dao」(ことわざと慣用句について)というレポートが、最初の慣
用句論の研究だとされいる。しかしながら本格的な、言語学システム的・科学的
な慣用研究は、1960 年代から始まっている。
実際、様々な言語論集でいくつかの慣用句の研究もされたが、その範囲は狭く
て内容も浅いものであった。また慣用句の多様な分析を通して、その特徴・定
義・機能などを観察する研究も見られない。研究の大半は、ベトナム語慣用句の
統計や辞典に集約されたのである。例えば Nguyễn Như Ý, Nguyễn Văn Khang,
Phạm Xuân Thành の『ベトナム語慣用句辞典』(1998)がそうである。Nguyễn Như Ý,
Nguyễn Văn Khang, Phạm Xuân Thành は『通用ベトナム語の辞典』の中で、慣用句
を次のように定義した。
「慣用句とは固定的な句であり、一般日用生活で用いられ、慣用句の全体的な
語彙的意味は要素の意味と合体とは異なるものである」。
(Nguyễn Như Ý, Nguyễn Văn Khang, Phạm Xuân Thành 2003, p.719)
言語学院(2004)、『ベトナム辞典』では、「慣用句とは習慣的に用いられて、
固定され、構築された要素の意味からは容易に解釈できない意味を持つ複合語で
ある」 (言語学院 2004、p.915)と述べた。
その他にも、慣用句の定義は種々存在するが、すべての研究者は「慣用句」と
いう呼び方を用いており、つぎの三点に慣用句の概念は集約されているといえる
のである。

1)

二つ以上の語で構成される。

2)

固定的な形態・構成を持つ。

3)

全体的な語彙的な意味は、要素の意味の合体ではない。

14


1.1.4.

本論での慣用句概念について

日本語においても、 ベトナム語においても、慣用句相当表現が多く存在してい
るため、混乱され易い。そこで、本論での慣用句概念を述べる前に、慣用句相当
表現を整理する。
まず、諺である。宮地裕(1982)は「諺には一つの文で独立して、格言、教訓
や皮肉、物事の法則を含まれているものである」と定義した。(例:「負けるが勝
ち」、「三日坊主」などである)。そして、品詞では名詞に区分される。
次は熟語である。白石大二(1977)は「2 字以上の漢字が強く結びつき、1 つの漢
語やそれに準ずる語(和漢混淆語など)となっているものは熱語という」と定義
した。なお、漢字 4 字で構成される「四字熟語」と総称される語は、熟語の中で
も特別視されることが多い。熟語は二つまたはそれ以上の単語が合わさって、一
つの単語として用いられるようになったものだから、時には複合語、合成語だと

いう場合もある。それに、慣用によって、特定の意味に用いられるようになった
語句の場合もある。それゆえ、場合によって熟語は慣用句と同等する。
さらに、秋元美晴(2002)は連語についてこのように説明した。「連語は 2 つ以
上の単語が結合して1つの概念を表すが、結合の仕方からみて語としても文とし
ても扱えないものである。このため、連語のとらえ方も様々である。「汗をか
く」、「意見が合う」、「甘い考え」のように、結合に制約があるが、全体の意
味は個々の構想要素から理解できるものを連語とする」と定義した。
本論での慣用句概念については前述した世界中で、日本で、そしてベトナムで
示された研究者の見解をまとめると、「慣用句とは基本的な語彙単位で固定的な
構成であり、多くの語の要素から成立しているが、それは統一したひとつの意味
を持つものであり、同時に再現性と意味の完全性を持つもの」である。そこで本
論では次のように慣用句を概念化する。
1) 固定的複合語である。
2) 句または文(命題)の形式である。
3) 再現性を持つ。

15


4) 意味を表す機能を持つ。
5) 意味の完全性を持ち、比喩性・隠喩性を持つ。
1.2. 慣用句の分類
慣用句について論ずるとき、その分類に関する様々な基準が考えられる。例え
ば、文法的形態による分類、意味分野による分類、身体語彙による分類、品詞別
による分類などがあるが、ここで、「形態による分類」、「品詞による分類」の
3 つの分類し方を述べる。
1.2.1. 形態による分類
慣用句は形態上に基づいて、次のように分類される。
1.


比喩形式の慣用句: 比喩形式の慣用句は主に直喩的慣用句と隠喩的慣用句

に分けられる。隠喩のタイプはさらに、動物の比喩を使う慣用句、自然現象の比
喩を使う慣用句、体の部分を使う比喩等々に分類される。直喩的慣用句では「よ
う」「思い」などの比喩指標が明示されるが、隠喩的慣用句では、比喩指標が明
示されず、句の全体が比喩的な意味を表す。例として
・彼の金遣いは荒いので、羽が生えたように金がなくなった。
・君と本当に馬が合うね、仕事しやすいよ。
2.

否定形式の慣用句: 否定の形をとる慣用句は日本語では多く見られる。例

えば
・会社が破産状態にあることなど露知らず、彼は相変わらずのんきに働いてい
た。
・私は兄とそりが合わないので、よく喧嘩する。
3. かさね形式の慣用句:「元も子もない」「あの手この手」「言わず語らず」
「踏んだり蹴ったり」のように、 類義語や関連語、対義語をならべたものなどに
よって意味が強調される慣用句はかさね形式の慣用句と呼ばれる。かさね形式を
とる慣用句は日本語で多いと言える。
例:

母のすすめを聞かないで、無理して株を買ったら、失敗して元も子もな

い。

16


1.2.2. 品詞別の特徴に基づいての分類

慣用句は中心となる品詞により次のように分類される。
1.動詞慣用句: 動詞慣用句は「名詞+助詞+動詞」の形を成し、慣用句の中
で、最も多く使用されるものである。例としては、目が届く、鼻にかける、骨を
折るなどである。
形容詞慣用句: 形容詞慣用句は「名詞+助詞+形容詞」の形を成し、その

2.

名詞と形容詞の間の意味関係はその間の助詞によって違う。動詞慣用句、名詞慣
用句に比べて尐ない方である。例としては、手が早い、口が軽い、虫がいいなど
である。
名詞慣用句: この種の慣用句は形式的に主に「名詞+名詞」「名詞+に+

3.

名詞」「名詞+の+名詞その他から成る。例として、十重二十重、寝耳に水、水
の泡、一糸まとわぬ裸、などがある。
1.3. まとめ
本章では、日本語における慣用句の定義、慣用句と同様的な形容の分別と慣用
句の分類を考察した。
慣用句については、まず、英語における慣用句定義についての観点、それから
日本語における慣用句定義についての観点、ベトナム語における慣用句定義につ
いての観点を考察した上で、本論での慣用句概念について述べた。具体的には慣
用句は次のよう特徴なを持つ:
1)

固定的複合語である。

2)


句または文(命題)の形式である。

3)

再現性を持つ。

4)

意味を表す機能を持つ。

5)

意味の完全性を持ち、比喩性・隠喩性を持つ。

次に、慣用句と同様的な形容(諺、熟語)と分別した。さらに、「慣用句分類」
では、慣用句をいくつかの方法に基づいて分類した。品詞別の特徴に基づき、慣
用句のタイプを「動詞慣用句形容詞慣用句」、「形容詞慣用句」、「名詞慣用句」

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の 3 種類に分けた。語彙的な特徴に基づいて慣用句のタイプを「身体語彙の慣用
句」、「心情語彙慣用句」、「漢語語彙の慣用句」、「洋語語彙慣用句」の 4 種
類に分けた。また、形式上により、類義語のタイプを「比喩形式の慣用句」、
「否定形式の慣用句」、「かさね形式の慣用句」の 3 種類に分けた。

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第二章

日本語における形容詞を含む慣用句の構成上の考察

2.1. 日本語形容詞についての概念
2.1.1. 日本語形容詞の定義
形容詞の定義については諸説があるが、本論では日本語の大辞典による定義を
前提とする。日本語の『広辞苑』によれば、次のとおり定義される。
「品詞の一つで、物事の性質・状態、人間の感覚・感情を表す自立語で、活用
がある。」
形容詞の基本的な性格は事物や人の状態を表わし、述語の働きと修飾語の働き
をする。また、文中での 働きの違いに応じて活用する。その一つは連用修飾の機
能である。
例: この鞄は新しいである。
新しい鞄
靴を新しく磨く。
2.1.2. 形容詞の分類
2.1.2.1. ナ形容詞とイ形容詞(形容詞の形態による分類)
形容詞を形態の面から分類すると、「イ形容詞」と「ナ形容詞」に分けられる。
名詞を修飾する場合に「…い」という形で表わされるものを「イ形容詞」と呼 ば
れ、名詞を修飾する場合に「…な」という形で表わされるものを「ナ形容詞」と
呼ばれる。
イ形容詞 例: 小さい、大きい、珍しい、美しい、欲しい、楽しい
ナ形容詞 例: 静か(な)、便利(な)、丈夫(な) 借用動詞と同様に、借用の

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ナ形容詞が多数存在する。特に、漢語形容詞のナ形 容詞における比率は高い。
例: 危険(だ)、優秀(だ)、ハンサム(だ)、クール(だ)
ただし、「手がない」の「ない」は文法的には動詞であるが、品詞上には形容
詞なため、本論は「ない」を含む慣用句も形容詞慣用句とし、研究対象とする。

2.1.2.2. 属性形容詞と感情形容詞(形容詞の表わす意味による分類)
形容詞が表わす状態には、人や物の属性(性質や特徴)の場合と、人の感情、
感覚の場合がある。
属性を表わす形容詞
例: 強い、低い、長い、勤勉(だ)、赤い、高い。。。
感情・感覚を表わす形容詞
例: 欲しい、懐かしい、かゆい、いや(だ)
これらの形容詞を、それぞれ「属性形容詞」、「感情形容詞」という。
2.2. 日本語における形容詞を含む慣用句の構成上の考察
本章で、日本語における形容詞を含む慣用句の慣用句全体の構成的な観点から
考察してみる。考察対象は日本語 238 個の慣用句と、ベトナム語 208 個の慣用句
である。
その結果として、形容詞を含む慣用句は 2 つの構成に分けられる。それは、連
語の構成と主語・述語の構成である。例として
・連合の構成:貧乏臭い= “hôi hám, nghèo nàn” = lôi thôi tồi tàn
浪費家の女性は男性に敬遠されますが、反対に、貧乏くさい女性もあまり人気
は高くありません。

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(= Những cơ gái tiêu xài hoang phí thì sẽ bị các chàng trai tránh xa và ngược lại,
những cô gái q lơi thơi thì cũng khơng được u thích)
・主述の構成:頭が固い = “ đầu cứng” = ngoan cố, bướng bỉnh
弟は頭が固いので、中々僕の意見を聞き入れてくれない。
(= Em trai tôi rất cứng đầu nên thường xuyên không nghe lời tôi.)
ただし、「いい子になる」、「ひどい目に遭う」のような形容詞を含む慣用句
は形式上には文であるが、本研究は形容詞を研究対象とするため、「いい子」、
「ひどい目」に注目して、それらの慣用句は連合の構成に属するとする。また、
「耳新しい」、「歯痛い」のどの慣用句は形式上には連語の構成であるが、この

場合は主格助詞の「が」が略されていると思われる。元の形は「耳が新しい」で
あるため、本論では、それらの慣用句は主語・主述の構成に属するとする。
考察した結果、2 つの構成は以下の表にまとめておく。
表 2.1:日本語・ベトナム語における形容詞を含む慣用句の二つ構成の割合



日本語

ベトナム語

形容詞慣用句


割合



割合

1

連語の構成

40

16.8%

186


89.4 %

2

主語・述語の構成

198

83.2%

22

10.6%

238

100%

208

100%

合計

この表を見れば、日本語において、主述の構成の形容詞 198 個(83.2%)は連語の
構成 40 個(16.8%)が圧倒的に多いことが明らかになった。ベトナム語においては
そ の 逆 で あ る 。 連 語 の 構 成 は 186(89.4%) も あ る の に 対 し て 、 主 述 の 構 成 は
22(10.6%)しかない。

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これからはベトナム語のと比較しながら、以上の二つの構成を考察してみる。
2.2.1. 連語の構成の形容詞を含む慣用句
形容詞を含む慣用句では、連語句の構成の形容詞慣用句は全体の 18.9 割しか占
めていない。それから、このグループは以下のような種類に分けられる。
1) 形容詞



名詞

涼しい顔 – “khuôn mặt lạnh” = “không quan tâm”
(子供が泣いているのに、お父さんは涼しい顔をしている)
新手 – “tay mới” = “phương pháp mới”
古手 – “tay cũ” = “người quen việc”
2) 名詞 –





形容詞

口先のうまい – “lỗ miệng ngon ngọt” = “khéo ăn khéo nói”
(彼は口先のうまいで、女性にモテモテである)
合計並みのいい – “hàng lơng tốt” = “xuất thân từ gia đình dịng dõi, có địa vị, học
thức”
爪の長い - “móng tay dài” = “lòng tham sâu sắc”
3)


形容詞



形容詞

器用貧乏 – “ khéo léo nhưng nghèo nàn” = “ dù khéo léo nhưng cố gắng đến mấy cũng
thất bại”
貧乏臭い – “hôi hám, nghèo nàn” = “lôi thôi, tồi tàn”
(浪費家の女性は男性に敬遠されますが、反対に、貧乏くさい女性もあまり人気
は高くありません)

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4)

名詞







形容詞

児戯に等しい – “ tương đương trò đùa của trẻ con” = “ tầm phào, vô giá trị”
(その話は児戯に等しいから、もうやめなさい)

5) 動詞



形容詞



動詞



形容詞

熱し易く冷め易い – “lúc nóng lúc lạnh” = “cả thèm chóng chán”
(彼女は熱し易く冷め易いタイプなので、恋人が多い。)
6) 名詞



でも



名詞



でも


いやでも応でも – “khơng thích cũng phải đáp ứng” – “khơng thích vẫn phải làm”
(社長の命令だから、いやでも応でも従わなければならない。)
7) 名詞 –





動詞



よりも



形容詞

火を見るよりも明らか – “Rõ hơn nhìn lửa” = “rõ mồn một, rõ như ban ngày”
(彼のカンニングすることが火を見るよりも明らかだ。)
8) 名詞



言葉巧みに

形容詞






- “từ ngữ khéo léo” = “Khéo ăn khéo nói”

(私は彼に言葉巧みに誘われた。)
9) 名詞







名詞



形容詞

目に一字なし- “Trong mắt khơng có một chữ” = “Mù chữ, một chữ bẻ đôi không
biết”
(もう 5 年間日本に住んでいるけど、漢字は目に一字なしだ。)
分かり易くするには、以上の説明は以下の表にまとめる。

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